この項目では、アスクレピオスの神話(へびつかい座の神話)について紹介します。
星座の神話を説明するだけのつもりが予想外の事が出てきて少し長くなりましたが宜しければお付き合いください。
ギリシア神話の特徴
「図説 古代ギリシアの暮らし」より抜粋
・古代ギリシア人は核となる経典を持たなかった
・経典の役割を無数の神話が担うことになった
・現実の過去として神話を語り、出自を神話によって主張した
(アスクレピオスを始祖とする医師の一族・父方の先祖だというヒポクラテス)
・口伝だったので同じ物語に幾つもの異なるバージョンが存在した
・地域色も強くかった
・それぞれの共同体は独自の物語を作り出し広めた
(アスクレピオスの神話について母親の出自が違うバージョンが土地土地で作られていた)
という前提があり、神話にも複数の説があります。
話によっては別の神の物語だったものがアスクレピオスの話として吸収されていったものもあります。
この項目ではアスクレピオスが星となった姿、へびつかい座の神話について紹介します。
へびつかい座は紀元後83年頃 – 168年頃に生きたと考えられるプトレマイオス(トレミー)が作成した星表に記載されている古い星座です。
アスクレピオスの信仰が広まった後のことなので母親の名はコロニスとされています。(アテナイに来る前は、信仰が移動した先のご当地の女性を母親とする説が幾つか出ていたらしい)。
アスクレピオスの生前 「へびつかい座の神話」
アスクレピオスの生前の「神話」は実のところ「へびつかい座」の逸話がメインにして唯一なのでは?という印象です。
日本でよく知られているバージョンのへびつかい座の神話はこんな感じです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/へびつかい座
ギリシャ神話では、医師アスクレーピオスの姿であるとされる。アポローンが、うそつきのカラス(からす座)の告げ口を本気にし、誤って自らの恋人コローニスを射殺した。
アポローンは、コローニスのお腹にいたアスクレーピオスを取り上げると、彼を賢者ケイローンに預けた。
ケイローンに医術を授けられ名医となったアスクレーピオスは、蛇が薬草を死んだ仲間の蛇に与えて蘇らせるのを見て、死者を蘇らせる術を知った。ヒュギーヌスは、へびつかい座が蛇を持っているのはこのためであるとする。
死者をも蘇らせるアスクレーピオスは冥神ハーデースの不興を買い、ハーデースに頼まれた大神ゼウスはアスクレーピオスを雷撃で撃ち殺した。これを知ったアポローンは激怒し、雷撃の矢を鍛えた3人のキュクロープスを殺した。
ゼウスはアポローンの怒りをなだめるため、アスクレーピオスを天に上げて星座とした。
なお、この日本語wikiの「神話」の項目の出典元として英語のURLが出されているが、そちらを翻訳すると「うそつきのカラス」などという単語は全く出てこないというwikiクオリティが炸裂していてだめだった。からす座の項目も同様。
[wikiのへびつかい座の神話の出典元URL]http://www.ianridpath.com/startales/ophiuchus.htm
機械翻訳ですが、話は大まかにわかると思います。
アスクレピオスはアポロとコロニスの息子でした(彼の母親はアルシノエだと言う人もいますが)。
物語は、コロニスがアポロに妊娠していた間に、人間であるイスキスと寝ることで、アポロを2回過ごしたということです。カラスはアポロに歓迎されないニュースをもたらしましたが、予想されていた報奨の代わりに、それまで白雪姫だったカラスはアポロに呪われて黒になりました。
で、このURLの参照元が多分この本
カラスが「 嘘 」を報告したのは日本ローカルのエピソード?
話を戻して。
へびつかい座の神話に出てくる「嘘をついたカラス」について、興味深い考察を述べていらっしゃる olleyolley(@olleyolley3)様 のツイートをお借りして紹介します。
ネット上でギリシア神話を解説する日本語ページを見ると結構な割合で「コロニスの浮気は烏の嘘(勘違い)」説を見るので広く普及しているようだ。不思議なことに英語で「烏の嘘(勘違い)」説を挙げているページを今のところ探し出せていない。日本でこれほどメジャーな説なら何かが根拠になっているはず。
ネット上でギリシア神話を解説する日本語ページを見ると結構な割合で「コロニスの浮気は烏の嘘(勘違い)」説を見るので広く普及しているようだ。不思議なことに英語で「烏の嘘(勘違い)」説を挙げているページを今のところ探し出せていない。日本でこれほどメジャーな説なら何かが根拠になっているはず。
— olleyolley (@olleyolley3) July 17, 2019
見張りのカラスが「アスクレピオスの母親が浮気をしているという嘘」を告げ口したという話ですが、外国語の説明では見つけられていないとのこと。(外国ではコロニスがアポロンから心を移した事が事実とされている)
見に行くとたしかに外国のwikiでは基本的に「コロニスは浮気した」とされています。
英語wiki「アスクレピオス」(機械翻訳より抜粋)
https://en.wikipedia.org/wiki/Asclepius
彼の母親は、アポロに不誠実であるためにアルテミスに殺されコロニスの裏切りについて知った
アスクレピオス生誕時の話が複数紹介されていますが、どちらのバージョンでも「母親は浮気をしていた」となっています。
その一方で、アポロンの助けで息子が無事生まれたバージョンもありました。
アスクレピオスはアポロの神殿で生まれ、ラケシスは助産婦として働き、アポロはコロニスの痛みを和らげました
こちらの出典についてもolleyolleyさんが触れていたのでご紹介します。
この讃歌ではアイグレはアポロンの神殿で出産し、アポロンと運命の三女神が出産の痛みを和らげたとあるので、アポロンは立会い出産している。また母の不貞も父による射殺への言及もない。この讃歌の中では親子3人は仲睦まじい家族の設定なんだな……としみじみする。
— olleyolley (@olleyolley3) July 18, 2019
話を外国でのアスクレピオスの神話紹介に戻します。
ギリシア語wiki(機械翻訳)
https://el.wikipedia.org/wiki/Ασκληπιός
アポロはje深い神であり、カラスが彼の恋人が死すべき者と結婚しようとしていることを明らかにしたとき、特に不快でした。
Ο Απόλλων ήταν ζηλότυπος θεός και δυσαρεστήθηκε ιδιαίτερα όταν ένας κόρακας του αποκάλυψε ότι η ερωμένη του επρόκειτο να παντρευτεί ένα θνητό.
こちらもカラスの嘘の記述はありません。
FGOのサーヴァントの設定
上記を踏まえた上でFGOの設定を再度確認してみると、カラスの嘘という話は異説として併記されているだけなのがわかります。
FGOのサーヴァントの解説(アスクレピオス)より
鴉が彼女の不貞を告げた(鴉の嘘であったともされる)
FGOの設定も、カラスが嘘を付いたエピソードは括弧付きの但し書きになっています。
カラスが嘘をついたことを括弧書きなのを考えると、FGO設定では「コロニスが不貞を働いていた」説をとっていると思われます(推測)
日本国内の本でも「ギリシア神話」の本だと、コロニスの浮気の件でカラスが嘘をついたという話は触れられていません。
こちらの本でもアポロンの項目でコロニスについて触れていて、「変身物語(ローマ時代になって書かれた神話本)」と、「ピュティア戦勝歌(前462年)」などから要約した、アポロンがコロニスの不貞を知った場面を2通り紹介しています。このどちらでも「嘘」をつくカラスは出ません。
カラスはコロニスについての報告で嘘をついた?
「カラスが嘘をついた」という(日本で?)出回っている説について。先にもツイートをお借りしたolleyolleyさんは、「からす座の神話と混ざった話がプラネタリウムで紹介されて広まったのでは?」という推測をされています。
日本で“コロニスの浮気はアポロンの誤解”説が広まっているのは、プラネタリウムや星座の本でカラス座の起源の説明に「水汲みに行ったカラスが遅い帰りを誤魔化すのに嘘をついた」というカラス座・コップ座・海蛇座に関する神話と、コロニスの死を混ぜて記述しているケースが多いのが原因のようだ。
日本で“コロニスの浮気はアポロンの誤解”説が広まっているのは、プラネタリウムや星座の本でカラス座の起源の説明に「水汲みに行ったカラスが遅い帰りを誤魔化すのに嘘をついた」というカラス座・コップ座・海蛇座に関する神話と、コロニスの死を混ぜて記述しているケースが多いのが原因のようだ。
— olleyolley (@olleyolley3) July 26, 2019
からす座の神話
次に、嘘つきカラスが出てくる「からす座の神話」をご紹介します。
大抵へびつかい座とセットで紹介(または同様の内容が記載)されています。
日本の「へびつかい座」「からす座の神話」を紹介するwebページ
からす座の神話
http://www.pleasuremind.jp/ASTRO/ASTROspring010D.html
カラスはついアポロンに「コローニアスはもう他の男に心をうつした」とうそを言ってしました。
うそをついた銀のカラスを黒い姿に変え、見せしめのために空にさらしたのでした。
アポロンはある時、銀のカラスに鉢をわたして水汲みにやらせました。
銀のカラスは水汲みに行くのですが、途中で無花果の実を見つけ、その木の下で無花果が熟すのを待っていました。
そして実を食べると水蛇(ヒュドラー)をつかんで帰ると「このへびがいたので、遅くなりました。」と嘘をつきました。
そのため、カラスは、鉢と水蛇と一緒に星に変えられ、いつまでも咽をかわかしていると伝えられています。
この記事にはタイムスタンプが付いていませんが、HPの運営時期を見るに最古で1998年時点の記事のようです。
この記事では、コロニスの見張りでも、水汲みのお使いでも、カラスはどちらでも嘘をついたことになっています。(調べきれていませんが、星の神話ではこの説を採用している事が多い印象です)
なお、同HPのへびつかい座の項目では別の説を紹介しています(当記事の最後の方で紹介します)。
次は外国で公開されている星座の神話を紹介します。
へびつかい座英語wiki(機械翻訳)より、へびつかい座とからす座の神話を紹介している部分はこうなっています。
Corvusは、アポロと彼の恋人であるCoronis the Lapithの神話に関連しています。
コロニスはアポロに不忠実でした。彼がこの情報を真っ白なカラスから学んだとき、彼はその羽を怒りで黒くした。
Corvusに関連するもう一つの伝説は、カラスがアポロのために水を汲みに行く途中で止まり、イチジクを食べることです。アポロに真実を語る代わりに、彼は嘘をついて、ヘビ、ヒドラが水から彼を遠ざけ、証拠としてヘビを彼の爪に保持していると言った。アポロ、これは嘘だと気付き、カラスを投げた(Corvus)、カップ(Crater)、そしてヘビ(Hydra)が空に向かっています。彼はさらに、現実の生活でも、カップが手の届かないところにある天国でも、永遠にのどが渇くようにすることで、気まずい鳥を罰しました。
へびつかい座 英語 子供向けwikiより(機械翻訳)
カラスは美しい銀色または雪に覆われた白い羽を持っていて、人間と話すことができました。カラスは神アポロにとって非常に特別な鳥でした。アポロの恋人コロニスが妊娠したとき、アポロはワタリガラスに彼女を見守るように言いました。コロニスはアポロへの関心を徐々に失い、人間に引き付けられました。カラスはひそかに彼女をスパイしていた。彼はコロニスに新しい恋人がいるとアポロに言った。アポロは非常に怒っていたので、忠実なワタリガラスの羽を黒に変え、鳥の話す能力を奪いました。コロニスはアポロの双子の妹アルテミスに殺されました。コロニスとアポロの子供が住んでいました。その後、彼はアスクレピオスになり、薬と癒しの神になりました。
別の物語では、アポロは彼のカラスを送り、クレーターと呼ばれる神の杯に水を入れました。カラスは、いくつかのイチジクが熟してそれらを食べるのを待っていました。彼はヒドラと呼ばれる水蛇とカップの水を持って非常に遅く戻ってきました。愚かなカラスは、水蛇のために遅れたと言った。アポロはだまされませんでした。彼はカラスを水蛇とコップと一緒に空に置いた。蛇は喉の渇いたカラスがコップの水に到達するのを止めます。カラスは、手の届かないところに水を見ることができます。
英語のwikiでは、からす座の神話(水くみのお使い)では、カラスが嘘をついたのは間違いないようです。
一方へびつかい座の神話(コロニスの見張り)では、見張り(護衛)を言いつけられていたのでコロニスが浮気をしていたことを告げています。嘘はついていません。
上記の通り、外国でははっきりと別の話になっていますが、日本の多くの星の神話紹介だと、コロニスを見張っていた真面目なカラスの話(へびつかい座)と、水くみを命じられた嘘つきカラスの話(からす座)、2つの星座をセットで紹介する際に混同されています。
日本の古い本にさかのぼってみた(昭和~明治)
かなり長くなったため別記事に分割しました。
自力で遡れた最古の本はこれでした。
★星のローマンス 古川竜城 著 (新光社, 1924/大正13年)
「この烏はいとお饒舌(しゃべり)で、時々は虚事(そらごと)をも言つた。」の記述あり。
この時期には他にも天文の本が出ているのでそちらも参照できればもっと色々分かると思うのですが、古い本のため流石に難しいので今回はここまでにします。
へびつかい座の神話で「カラスが嘘を報告した」 まとめ
「日本ではへびつかい座の神話として『カラスの早とちり』『カラスの嘘』『無実の罪』という説が広まった」理由について。
起点が大正時代までさかのぼり、予想以上に古くはっきりしないのであくまで推測ですが。
・カラスが意図的に「嘘」をついたという説は、「カラスが早とちりをして意図せず嘘になってしまった」という異説があるへびつかい座と、「意図的に嘘をついた」からす座の神話が混ざった誤解?(あくまで推測)
・現在では「コロニスについての報告で嘘をついたカラス」は異説として紹介に留めている事も多い
・「早まった鴉の告げ口で(コロニスは)無実の罪を受けた」という説については「エピダウロスの仕人たちの言い伝え」として、呉茂一「ギリシア神話」で紹介されている
・「誤解」説は外国のwebだと記述が見つかりづらいため、認知度が低いマイナーな説っぽい?(対して日本での認知度は高い)
・日本で「コロニスの見張りのカラスは嘘をつく性質だった」という話でアスクレピオスの生誕神話を紹介している本は大正まで遡る(それ以前は不明)
実際のところはもっとたくさん当時の書籍などを調べないと分かりませんが、自分の手の届く範囲ではこういう推測になりました。
大正の頃の星の神話の本は現在の主流とは異なる神話を紹介していたので、星の神話についてまた読み返してみたいと思いました。
アスクレピオスの逸話
へびつかい座の神話になっている誕生・蘇生薬~死亡、以外の逸話はあまり多くないですが、諸説をご紹介します。
生前
嘘つきカラスの話の説でご紹介した星座の話のHP。へびつかい座の項目ではこのようなエピソードを紹介していました。
蛇使い座と蛇座の神話。
http://www.pleasuremind.jp/ASTRO/ASTROsummer011A.html
コローニアスが、アポロンとの子をお腹に宿している時に、イスキュスと不義を働いたため、または結婚したため、アポロンは怒ってコローニアスを殺し、火葬されている母親の胎内から取り出したと言う説。
もう一つは、コローニアスは大盗賊だった父とともに、ペロポーソスに来ましたが、そこでアポロンに犯され赤ん坊を宿したため、コローニアスはエピダウロスと言う所で赤ん坊を産み捨てました。
捨てられた子は、一頭の牝山羊が乳を与え、一頭の犬が番をし守っていた所、犬の飼い主が子供を発見、頭に後光が走っていたため拾い上げた事となっています。
説話に因っては、アスクレピオスの母親は、レウキッポスの娘アルシノエーであるとしています。
その後アスクレピオスは、アポロンによって、ペリオーン山の洞穴に住むケンタウロス、ケイロンに預けられ、医術を授かりました。
彼はのちに名医となり、アテナより、死者をも蘇らせるゴルゴン、メデューサの血をもらい、死者を蘇生させる名医となりました。
アスクレピオスは、カバネウス・リュクールゴス・ミノス王の子グラウコス等を蘇らせ、最後にアルテミスの願いによりヒッポリュトスを蘇生させました。
ゼウスは天地の常道をアスピレクオスが覆す事を恐れ、雷撃を投じて殺し空にあげて星座としたそうです。
後代になってアスクレピオスは、ヘラクレスとカリュドーンの猪狩りやアロゴ探検隊に加わったとされましたが、本来は関係してないそうです。
アスクレピオスはギリシャ全土で名医としてまつられその祠には蛇がたくさん飼われ、また犬も同様に飼われていたそうで、多くの奇蹟が碑文等で伝わっているそうです。
この記事の最初に紹介した「それぞれの共同体は独自の物語を作り出し広めた」(アスクレピオスの神話について母親の出自が違うバージョンが土地土地で作られていた)の異説について触れています。アスクレピオスの生誕説ご当地バージョンがいろいろあるという話。
この記事の母親についての諸説は「ギリシア・ローマ神話辞典」のアスクレピオスの項目がソースかと思われます。「ゴルゴーンの血」もこの本。
その他のアスクレピオスの生前の逸話については上記の記事にも挙げられていますが。
・アルゴー船に乗っていたとされる話もある
※名簿に名が挙げられているだけの本もあるが、「異伝に属する」の但し書きで、ピーネウスが誤解によって盲目にした二人の子の目をアルゴー船に乗っていたアスクレピオスが治したという話を紹介している本もある(ギリシア神話(上) (新潮文庫))
・話のバリエーションによってはアルゴー船に乗る前、幼いイアソンがケイローンに預けられる時にアスクレピオスも登場する(多分後世の創作?)
・カリュドーンの猪イベントにも参加している場合がある
※アルゴー船やカリュドーンの猪などの英雄譚への参加は基本後付と考えられている
・眷属として蛇以外に犬も考えられている
アスクレピオスが医療の知恵を得た相手
・賢者ケイローンから教わった
・蛇から知恵を得た
蘇生薬関係
・蛇が使った薬草から知った(死んだ蛇に仲間の蛇が薬草を使うのを見た)
※このエピソードは「ポリュイードス」の話からアスクレピオスの話として焼き直された?当記事最初の英語本紹介URLで同エピソードがアスクレピオスの逸話として紹介されている
・女神アテナから、ペルセウスが討伐して女神に捧げられたゴルゴーンの血を渡された
※ペルセウスは(石化能力のある)ゴルゴーンの頭を捧げた、という記述の本もある。すると右の手とか脇腹からの血云々の話と繋がらなくなるため、元々はどの本にどういう経緯で渡されたと書いてあったのか確認したい
神になり祀られた後の話
・エピダウロスの医療神域にて「こういう夢を見た」「こういう出来事があった」「その結果病気が治った」という逸話
・当時の創作、ギリシャ喜劇「福の神」に登場。霊験あらたかな治癒神として他の神の病気を治す
・前291 ローマの大疫病。疫病に苦しむローマに分社を作る事になった時に蛇が船に乗り込みローマへと渡ったという逸話(この蛇がアスクレピオス本人と考えられている)
その他、蛇の姿で顕現した神としては、アンフィアラオス、アスクレピオス、ヒュギエイア、グリュコーン等があげられる。
このうち、医療の神として有名なアスクレピオスは、治癒に関する祭祀や聖域の建設のため、アテナイ、コース、ペルガモン、ローマ等の諸都市を蛇の姿で巡ったと伝えられている。
オウィディウスの「変身物語」第15巻622以下には、華麗な大蛇に転身したアスクレピオスが、ローマで起こった疫病を鎮静するために、使節団に随行されながらエピダウロスからローマへと運ばれて行く様子が、壮麗で優美に表現されている。
ギリシャおよびローマ医学の概観(青空文庫)
https://www.aozora.gr.jp/cards/001783/files/56524_67545.html使節がエピダウロスに送られ、アスクレピオスに助けを求めた。使節はアスクレピオスの神像を持ち帰ったが、彼らの船がテヴェレ川(イ:Tevere、英:Tiber)を遡行しているときに、航海中に隠れていたヘビが船から滑り出て、アスクレピオス自身がローマ市民を助けに来たと信じていた人々が歓迎している土手に上陸した。
オウィディウス(Ovidius:英語名 Ovid、ローマ詩人、43BC-c.17AD)はこの神について次のように詠っている。
「私は私の神殿を出発して来た。
このヘビは野心的な動きをしている
私の杖は円を描いてヘビにすべての道を示している。
彼の形は大きくなり堂々とするだろうと思う、
そして神があるべきように変化し、ローマを助けるだろう。」
オウィディウス「変身物語」xv)
こういったエピソードが有名です。
あとは直接本人の話ではないですが、イーリアス他のトロイア戦争関係の物語で息子たちの話が綴られています。「アスクレピオスの息子のマカオン」という説明で記されています(弟ポダレイリオスが、兄が死んだ後に嘆く言葉から、トロイア戦争時点でアスクレピオスは既に死んでいるのが分かる)。
調べきれていないのでまだまだ漏れがあると思われますが、アスクレピオスの主だったエピソードは挙げられたと思います。
アスクレピオスは神話自体は少ないのですが、複数のバージョンが有るので調べてみると奥深いです。
呉茂一さんの「ギリシア神話 (新潮文庫)」のアスクレピオスの説明では
・アルゴー船に乗っている
・乗船時に治療行為をした話に触れている
・息子たちの活躍に触れている
など、色々な説について取り上げています。
[メモ] この記事を書いた時点ではまだ読んでいない本
FGOは神話そのものより、神話を下敷きにした叙事詩や創作からエピソードを持って来ることが多い気がする。
[…] [メモ]アスクレピオス(FGO)/へびつかい座の神話について […]